ニュースなどでたびたび報道される、アノニマス。ハッカー集団だとは知っていても、どんな目的で活動しているか知らない。組織形態はどうなっているのだろう? など、疑問に思うことも多いでしょう。
アノニマスという人たちはどのような集団で、これまでにどのような活動をしてきたのか、など分かりやすく解説していきます。
アノニマスとはなに?

まず、アノニマスとはどのような人たちか、カンタンに概要を説明します。
そもそも何者?
アノニマスとは、世界的ハッカー集団です。2003年ごろに形成されたといわれています。広義のハッカーとは、コンピューターやシステムに侵入したり、攻撃したりする人たちのことです。
しかし、彼らがハッキング(サイバー攻撃)をおこなうのは宗教・政治に対する抗議活動がメイン。彼らなりのデモの手段というわけです。
アノニマスはいわゆる「烏合の衆」で、特定のリーダーやメンバーシップは存在しません。作戦への参加・不参加は自由で、また誰でも参加することができます。
名前の意味は?
英語で「Anonymous」は無名、匿名などの意味を持つ言葉です。アノニマスの起源であるネット掲示板4chanでは、デフォルトのハンドルネームがAnonymousで、これをそのままとったとされます。
なんの仮面をつけている?
彼らは表に出る際、揃いの仮面を着用します。これは、2006年公開の映画「Vフォー・ヴェンデッタ」主人公「V」(モデルはガイ・フォークスという歴史上の人物)が着用しているもの。
そもそもガイ・フォークスは、イングランド王ジェームズ1世の殺害を計画した犯罪者です。しかし、小説など創作の影響で、反体制派・民衆のヒーロー的存在と見なされるようになりました。
そのため、アノニマスは反体制派の象徴である彼の仮面をつけるようになったのでしょう。なお、ガイ・フォークスは実際に鼻下の八の字ヒゲ、太いアゴヒゲが特徴の人物だったようです。
これまでの活動について
これまでにアノニマスが犯行声明を出しており、話題になった事例をいくつかご紹介します。
2008年 サイエントロジーへの抗議
アメリカに本拠地を置く新興宗教・サイエントロジーの活動に反対し、デモ活動をおこなったのが「プロジェクト・チャノロジー」という大規模な作戦でした。
当初はDDoSなどのサイバー攻撃がおこなわれ、2008年2月10日には世界93都市で7000人参加のデモに発展しました。現在もアノニマスの一部メンバーが引き続き抗議活動をおこなっているようです。
2011年 アラブの春に助力
2010~2011年、チュニジア・エジプトなどアラブで発生した反政府デモ「アラブの春」にも関与していることが明らかになっています。
エジプトの革命はFacebookではじまりましたが、政府がネット回線を遮断しようとしたため、アノニマスの信条である「インターネットの自由」に反するとして、機密情報を公開・回線を復帰させました。
2011年 麻薬組織への抗議
メキシコの麻薬組織セタス(Los Zetas)が、10月末にアノニマスのメンバーを拉致。アノニマス側は「メンバーを解放しなければ組織の情報を公開する」と宣戦布告しました。
これに対し、セタスは人質を解放。ただ、セタス側も情報を公開すれば1件あたり10人に報復すると脅迫したため、情報の公開はおこなわれませんでした。
2012年 違法ダウンロード刑罰化への抗議
6月に日本で可決された「違法ダウンロード刑事罰化」法案への抗議として、日本国内の複数サイトをサーバーダウンさせました。
攻撃されたのは財務省、自民党、民主党(現 民進党)、日本音楽著作権協会(JASRAC)です。この際、霞が関と間違えて、霞ヶ浦河川事務所のサイトも攻撃してしまったとのこと。
Anonymousが日本政府とレコード協会に“宣戦布告”。違法ダウンロード刑事罰化に抗議^編 http://t.co/S1a9icTF
— ITmedia NEWS (@itmedia_news) 2012年6月26日
2013年 北朝鮮への抗議
北朝鮮の人工衛星「光明星3号2号機」発射について、弾道ミサイル発射実験であるとして、抗議目的で北朝鮮のコンピューターネットワークに侵入。
北朝鮮の韓国向け広報用サイト「わが民族同士」をハッキングしてアクセス不能にし、サイト情報を公開したほか、金正恩の即時辞任と核兵器放棄などを要求しました。
アノニマスが北朝鮮に「宣戦布告」国際的ハッカー集団アノニマスを名乗るインターネットの利用者が、北朝鮮の対外宣伝用ウェブサイトにサイバー攻撃を行い、利用者のデータを盗み出したとする犯行声明を発表した。 http://t.co/lbzPp7sDt1 via @jcast_news
— FRCSRJP (@FRCSRJP) 2013年4月3日
2014年 KKKへの抗議
8月にアメリカで発生した10代の黒人青年が白人警官に射殺された事件。これに一般市民が抗議すると、白人至上主義団体「KKK(クー・クラックス・クラン)」が抗議する人たちを攻撃すると脅迫しました。
それを契機にアノニマスが関連サイトにアクセスを殺到させる「DDoS攻撃」を仕掛け、2つのtwitterアカウントを乗っ取り。翌年には支持者とされるおよそ100人の名前を公表しました。
アノニマスの「KKK支持者リスト」公表をめぐる大義と異論(THE PAGE) https://t.co/wuth1hVlNA #thepage_jp
— THE PAGE(ザ・ページ) (@thepage_jp) 2015年11月12日
2015年 ISILに宣戦布告
イスラム過激派組織ISIL(ISIS/イスラム国)に対して宣戦布告をおこない、メンバーのFacebook・twitterアカウント数百件の削除を実施。
また同年11月に発生したパリ同時多発テロ事件の際には、「パリ作戦」と称し、大規模な反ISISキャンペーンを開始。世界中のハッカーに攻撃をおこなうよう呼びかけました。
【対テロ戦争】アノニマスがISISへの一斉攻撃を呼び掛け──一般ユーザーの参加も募り、12月11日に大規模攻撃を目指す|ニューズウィーク日本版 https://t.co/1JC8yipxfJ
— ニューズウィーク日本版 (@Newsweek_JAPAN) 2015年12月10日
2016年 世界各国の銀行にサイバー攻撃
アメリカの連邦準備銀行やイギリスのイングランド銀行など、世界各国20以上の中央銀行に対し、DoS攻撃を実施してサーバーをダウンさせていることが明らかになりました。
この攻撃は「イカルス作戦」と名付けられて2016年5月に開始したと見られ、理由は「腐敗した世界的な銀行カルテルへの蜂起」と位置づけています。
#Anonymous Targets Bank of #Greece Website with Massive #DDoS Attack https://t.co/uM5zvC21Wr #OpIcarus pic.twitter.com/oSEilVjQYB
— HackRead (@HackRead) 2016年5月2日
2017年 ビルダーバーグ会議への抗議
ビルダーバーグ会議とは、毎年開催される世界のトップリーダーたちが集う会議。これにより世界情勢が大きく動くとされ、内容は厳重な情報統制のもと、一切外部に漏れません。
このサイトをアノニマスがハッキング、「我々はあなた方を常に監視している」と警告しました。攻撃理由としては、会議が推進する「世界統一政府によるNWO(管理社会実現)」を阻止するためとしています。
Anonymous hackers take the Bilderberg website offline just before the NWO elite's 2017 confab.https://t.co/4YpJo8dN6a
— Your News Wire (@yournewswire) 2017年6月2日
まとめ
アノニマスという集団の概要、これまでの活動について紹介しました。アノニマスは基本的にインターネットの自由を掲げ、自分たちが正しくないと判断すれば、どんな組織であっても攻撃を仕掛けます。
それでいてリーダーやメンバー名簿のようなものはなく、作戦の参加も自由。まさに、現代だからこそ生まれた不思議な集団といえるのではないでしょうか。